夢と現の境目で:後編

そんな会話なんてとっくに忘れた、数日後。
「ソーマくん、この前の話、解決になってないよ!」
リクは学校から帰るなり、いきなりそんな事を言い出した。
「この前の話って?」
「今が夢の中かどうかって話!」
あぁ、あれ。
ちゃんと気付いたのか。ちょっと意外。
「実際には目覚めないってコトでしょ」
「えっ、ソーマくん気付いてたの?!」
当たり前だろ、と言いたいのを堪える。
「夢の中の動きなんかが眠ってる身体に反映されるワケ無いじゃん」
つまり、夢の中で頬なんかつねったところで、現実に寝ている身体までもが頬をつねる事はあり得ない、というワケだ。
じゃないと、例えば全力疾走する夢なんかを見ている間はホントに走っていなきゃいけないコトになる。夢遊病者じゃないんだから。
「リクもよく気付いたね」
これは素直に意外だった。
「あのね、さっきモモちゃんに聞いたんだ。モモちゃん、前にやったことがあるけど起きれなかったって言ってたから」
「…………」
まさかあんなの実践する人間が居るとは。モモちゃん、侮り難し。

気がつくと、リクは黙り込んでいた。
「どうしたんだよ」
「うん……じゃあやっぱり、ここが現実だって証明は出来ないのかなぁって」
……まだそんな事で悩んでたのかコイツ。なんか呆れてきた。
正攻法で相手するのはもうやめる事にする。
「証明なんて必要ない」
「え?」
今までの話を全て水泡に帰すことになるけど、きっとリクの言う“解決”に1番近いのはこれだろうから。
「だから証明なんて必要ないんだよ。
もっかい聞くけど、お前は今はどっちだと思う?」
「えと、多分現実の方だと思う」
「じゃあ今、どっちだったら嬉しい?」
「……え?」
「『夢なら醒めないで』って言うでしょ?
もし今が夢の中だろうと、幸せならそれでいいじゃん。
ボクはそう思う」
そこが現実でなかったとしても関係ない。ただ楽しんだ者勝ちだろう、結局の所。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
ご所望だった“解決”は喋り終わったのに、リクはポカンと呆けたまま何も言わない。
「…………」
「……なに」
「あ、うん、ソーマくんスゴイなって思って」
「……」
ま、真顔でなんつーコトを。
あまりの不意打ちに思わず照れてしまう。
「僕、前にもしばらく考えたんだけど、全然分からなかったから。
すぐにそんな答えを出せるなんて、やっぱりソーマくんは頭いいんだなぁって」
頭いいとか関係ないんだけど、と言いたくなったがやめた。さっきのに輪をかけて恥ずかしいコトを言われそうな気がしたから。
「……もう気は済んだ?」
「うん、ありがと」

………………。
これは夢じゃないと良いな、なんて。
まるでリクみたいだと思いつつ、あまり悪い気はしなかった。
こんな気分も、たまには悪くないかもしれない。

あとがき

急いで書き上げたので自分でもあんまり…。
キャラに合ってないなぁと思ってギリギリで書き直したので色々変かもしれません…。
まぁあんまり気にしないで下さい。

ほいでは読了ありがとうございましたー。

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2005.10.16 upload